東桜学館開校から7年目を迎えて②(校長より)

東桜学館生は自由であれ

開校7年目となり、生徒諸君の姿から東桜学館の校風といったことも垣間見られるようになるだろうと思います。

そこで今回は、敢えて東桜学館生のあり方として、私が生徒諸君に期待することについて記したいと思います。

本年度の東桜学館高等学校の生徒会スローガンは、”for Freedom~自由のために~”です。
生徒会長の早坂京夏さんは、新入生歓迎のメッセージの中で次のように記しています。
「自分とは異なる意見を持つ人との会話で得られる広い価値観や、規律を守ることにより生まれる信頼関係を持つことが、『自由』に繋がると考えています。また、昨年度、女子生徒の制服としてスラックスを導入したように、時代の変化に対応していく学校を目指しています。」

このメッセージに私も大いに共感していることは始業式でも話をしました。

私も、これまで、「自主」「自律」の精神を身につけることによって「自立」を目指そう。そして、「信頼」を得ることで「自由」になろうと生徒諸君に呼びかけてきました。

さらに、物事に取り組む際には、「しなければならない」からするのではなく、「自らの意志で望んで取り組む」姿勢を大切にしてほしいと話してきました。

東桜学館生には、自立を目指すことにより、“自由を標榜する”ことを期待します。

また、自由を標榜するということは、“多様性(ダイバーシティ)を尊重する”ことでもあります。

(「自由」=わがまま、奔放さと連想しがちですが、もちろんそのような趣旨ではありませんし、また、何ものにも依存していない状態としての自由も身につけてほしいと思います。例えば「スマホ依存」や「ゲーム依存」といった状態は「自由」ではないということです。)

どのようなことを通じて社会に貢献したいのかを希求せよ

次に、私が、東桜学館生としての矜持“東桜PRIDE”として生徒諸君に求めたいことについて述べます。

noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)という言葉があります。

フランス語の「la noblesse」(貴族)と「obliger」(義務を背負わせる)の複合語で、その意味は「高貴なる者に伴う義務」であり、ここでいう義務とは「社会に対する還元の義務がある」「社会に対して果たすべき責任が重い」というような内容と私は解しています。欧米社会では基本的な道徳観として知られているようです。

また、新渡戸稲造(前の5千円札に描かれていた)はその著書「武士道」の中で「武士道とは武士階級にとってのnoblesse obligeである。」という言葉を残しています。

「武士道」は、1899年に、日本人の倫理観がいかに培われてきたかを世界に知ってもらう必要があると考えた新渡戸稲造が、英語で書き上げた作品です。

その中では、武士道の精神を “7つの徳” 「義」「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」で説明しています。

 

中学校、高等学校で学ぶ意義は多様ですが、自分は社会に出たとき、どのようなことを通じて人を幸せにしたいのかを考えるためであったり、そのために必要な力を身につけたりするためだということも意識してほしいと願います。

そこで、東桜学館生としての矜持として生徒諸君に求めたいことは・・・
東桜学館生はどのようなことを通じて社会に貢献したいのかを希求するということです。

ここでいう「社会のため」とは、市井の人々のためということを意図しています。

生徒諸君と話をしていると「私は〇〇を通じて人の役に立ちたい」という話をあたり前のようにしてくれます。そのマインドは、私が中高生だった時代より豊かなような気がします。そこが、いまの時代の子どもたちの素晴らしい点の一つだと私は感じています。

また、「高い志」を基本理念に掲げている東桜学館生であれば、「社会に対する還元の義務がある」「社会に対して果たすべき責任が重い」という意識を持ってくれるものと期待しています。そして、そのことを意識することが、社会人としてよりよい姿で自己実現するとともに、それぞれの幸せに繋がるものと考えます。

「武士道」について

ここで、7つの徳のうち、「義」「勇」「仁」「礼」「誠」について私なりに簡単に触れておきます。

「義」・・・自分の良心に従って正しい行いをする心。嘘をつかない、相手を騙さないなど。

「勇」・・・何が起きても動じない心。

「仁」・・・思いやりの心。

「礼」・・・他者に対する敬意。

「誠」・・・誠意。自分で決めたことは曲げないという信念。

 

「武士道」について、改めて意識する場面があります。

災害に見舞われた際の日本人の行動です。2011年3月11日に起きた東日本大震災のときもそうでした。

大きな災害に見舞われているにも関わらず、冷静に振る舞い、暴動や略奪が起こらない。それどころか、避難所での配給の場面では、きちんと列をつくって順番を守り、弱い立場の方に対する譲り合いなどの配慮も忘れない。

それらの日本人の行動は世界中から賞賛を集めました。

私の中では、それらの規範となっているのが「武士道」の精神ではないだろうかと思っています。つまり、武士道とは日本人にとってのnoblesse obligeと考えることもできるのではないでしょうか。

The Japanese word which I have roughly rendered Chivalry, is, in the original, more expressive than Horsemanship. Bu-shi-do means literally Military-Knight-Ways-the ways which fighting nobles should observe in their daily life as well as in their vocation; in a word, the “Precepts of Knighthood”, the NOBLESSE OBLIGE of the warrior class.

「武士道」より