昨年度の東桜学館の創立記念講演では、JAXAの武井悠人さんから「はやぶさ2」についてご講演をいただきました。その後、はやぶさ2について新たなニュースが報道されましたので、2022年6月10日の朝日新聞の記事をもとに掲載します。
生命の材料となる物質は隕石などで運ばれてきたのか?
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に持ち帰った小惑星「リュウグウ」の砂や石を研究チームが分析した結果、生命の材料となる種類のアミノ酸が検出されたことがわかりました。また、大量の水をつくるのに十分な量の水素原子も確認されました。
これは、地球の生命が誕生する前に、生命の材料となる物質が隕石などで運ばれて地球に降り注いだという説を補強するもので、地球外で採取した試料から直接、アミノ酸が確認されたのは初めてのことです。
特に注目されるのは、見つかったアミノ酸の構造分析
はやぶさ2が、2020年12月に持ち帰った5.4gの砂や石については、日米の複数の研究チームが外気に触れない状態で解析を進めており、これまでの解析で、岡山大学などの研究チームは、23種類のアミノ酸が見つかったと発表しました。それらの中には、体内でエネルギーを生み出す反応に関係するアスパラギン酸、うま味成分のグルタミン酸やグリシン、アラニンなど生命活動に重要なタンパク質を構成するアミノ酸も10種類近く含まれているようです。
特に注目されるのは、見つかったアミノ酸の構造分析です。自然界にアミノ酸は多数ありますが、タンパク質は20種類のアミノ酸でできています。アミノ酸には、同じ種類でも、立体構造が鏡に映したように対称な二つのタイプ(左手型と右手型)があります。(高等学校化学の有機化学分野の「鏡像異性体」で学習します。) なぜか地球の生命をつくるアミノ酸のほとんどは左手型でできていますが、その理由は未だ不明です。
もしも、今後の分析の結果、見つかったアミノ酸が左手型に偏っていることがわかれば、地球の生命の由来である可能性が高まります。一方、偏りがなければ、生命の起源がどこなのか、謎が深まることになりそうです。
今後、生命の起源に迫る重要な報告が続くかもしれません。楽しみに待ちたいと思います。